8月より発売が開始されたグランドセイコーのクロノグラフ“テンタグラフ”。注目度という点においてはスプリングドライブ搭載のエボリューション9 コレクションの後塵を拝する印象はあるものの、筆者は以前よりこのクロノグラフの質感が気になっていた。
今回は、個性的なデザインも特徴的なテンタグラフ“SLGC009”の実機レビューを行った。

■Ref.SLGC009。ブリリアントハードチタン(43mm径)。日常生活用強化防水(20気圧防水)。自動巻き(Cal.9SC5)。231万円
GRAND SEIKO(グランドセイコー)
Tokyo Lion Tentagraph SLGC009
ブランドの象徴である獅子をモチーフにしたクロノグラフ。大胆な造形が目を引くチタン合金素材のケースに、力強いデザインの文字盤が合わせられている。
●ユニークなケース造形
まず目を引くのは、そのユニークなケース形状だ。ステンレスの約2倍の硬度を誇るブリリアントハードチタン製ケースには繊細なザラツ研磨とヘアライン仕上げが施され、金属の質感が生かされた造形美を楽しめる。
個性的なケース造形に加え、操作性にこだわって改良されたというリューズ横のプッシャー形状にも注目。その存在感もさることながら、非常に大きく押しやすいため、高い実用性も確保されている。
●文字盤デザイン
獅子のたてがみ風の文字盤に配置されたサブダイアルは椀状で奥行きがあり、高い視認性が確保されている。獅子の爪のような多面体インデックスにはダイヤカット仕上げが施され、こちらの存在感も抜群だ。随所に獅子の力強さがモチーフのデザインが徹底されており、深いこだわりが感じられる。非常にユニークなデザインコンセプトの強さは面白い。
●ケースバック・ムーヴメント
ベルト裏側には獅子の肉球状の凹凸があり、湿気を逃がしてくれる。ムーヴメントには毎秒10振動のハイビートクロノグラフでありながら、ツインバレル機構により約72時間のロングパワーリザーブをもつ自動巻きキャリバー“9SC5”を搭載。シースルー仕様のケースバックからその動きを堪能できる。
●着用感と総評
着用感については43mm径に15.6mm厚とかなりボリュームがあり、手首が細い筆者は少しぐらつく印象も。ただ、カーブした裏ブタ形状や短いラグ、ベルト裏側の突起がフィットするなどディテール面が工夫されているため、手首周りの長さが平均以上の人は問題ないだろう。
好みがわかれるデザインではあるものの、ユニークなコンセプトと各種ディテールの質の高さが魅力の本作。惜しむべくは230万円超えの価格だろうか。仕上げの良さを考慮すれば致し方ないところも承知のうえだが、庶民には簡単に手が届く価格帯ではないとも感じた。
文◎市村 信太郎/写真◎水橋 崇行(※文字盤カットを除く)
【問い合わせ先】
セイコーウオッチ お客様相談室(グランドセイコー)
TEL.0120-302-617
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