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【元祖セイコーダイバーズ】国産初の本格ダイバーズウオッチ“62MAS”の魅力を徹底解説

アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。


セイコー
150m ファーストダイバー

今回紹介するのは、1967年に製造されたセイコーの“ファーストダイバー”こと62MASだ。大きなリューズや裏ブタの刻印から後期型の個体であることが判別できる。

国産初の本格的なダイバーズウオッチとして登場した本作は、安全性と信頼性を第一とするセイコーの“質実剛健”なダイバーズウオッチづくりの始まりとも呼べる時計だろう。

クリック感がなく、両方向にスムースに回転するベゼルや、ネジ込み式ではないリューズ、プラスチック製の風防など、現代のダイバーズウオッチと比較すると、心もとないスペックだが、当時の国産時計としては先進的な性能であり、南極越冬隊に採用された実績も残している。

セイコー初のダイバーズウオッチということもあってか、60年代当時のスイス製ダイバーズウオッチを参考にしたと思われるディテールが各所に見受けられる。ステンレス塊を削り出したような直線的なケース形状や、シンプルな形状の夜光入り時分針などは同年のスキンダイバーを思わせる雰囲気だ。

【写真の時計】セイコー 150m ファーストダイバー。Ref.6217-8001。SS(38mm径)。自動巻き(Cal.6217A)。1967年製。52万8000円。取り扱い店/米田屋

【画像:文字盤やムーヴメントの状態を見る(全5枚)

 

前述のとおり海外製品の影響を感じさせるモデルではあるが、セイコーならではの信頼性を高める工夫も随所に盛り込まれている。その一例が、エンボス加工によって成形されたアプライトインデックスだ。これは一般的な植字インデックスのように強い衝撃で剥がれ落ちることがないよう設計されたもので、水中という過酷な環境下での使用を想定した構造である。エッジが立ち、平滑面が際立つそのインデックス枠は、エンボス加工とは思えないほど美しい仕上がりだ。

このほかにも、リューズ部分に二重パッキン構造を採用することで、ネジ込み式の構造を採用することなく、150メートルの防水性能を確保している点などが挙げられる。

ムーヴメントには手巻き機能をもたない自動巻きのCal.6217を搭載。手巻きをオミットすることで量産性と低コスト化を図りつつ、マジックレバー機構により優れた巻き上げ効率を確保している。筆者も同系統のCal.62系を搭載したモデルを使用した経験があるが、装着前に30〜40回ほど振ってから1日着用した際も、停止することなく稼働していた。腕の動きや運動量に個人差はあるものの、適切に整備された個体であれば日常使用でも十分な巻き上げが得られる。

コンディションに目を向けると、全体にキズや変色、研磨によるケースシェイプの崩れは見られず、良好な状態を保っている。夜光にはわずかな変色があるものの、剥がれや欠けは確認できない。当時多くのダイバーズウオッチに採用されていたラバー製のトロピックベルトが装着されている点にも注目だ。

このモデルの登場を機に、セイコーはダイバーズウオッチをはじめとするスポーツウオッチの研究開発をさらに推し進め、さまざまな分野のプロフェッショナルに向けて高い信頼性を備えた腕時計を生み出していくこととなった。
粗削りながらも、そうした精神の原点を体現するファーストダイバーは、やはり特別な存在であると言えるだろう。

 

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文◎LowBEAT編集部/画像◎米田屋

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