1990年代後半に一世を風靡し、いまや国内外のZ世代や海外セレブの間で最先端のファッションアイテムとしてリバイバルヒットしている平成レトロの象徴『たまごっち』。そして先日発売され、世界中で大きな話題を巻き起こしたスウォッチ×オーデマ ピゲのコラボ作『Royal Pop(ロイヤル ポップ)』。
一見すると交わるはずのない“日本の玩具”と“スイスのカジュアル時計”だが、両者の熱狂を比較すると、いまの時代ならではのある共通点が見えてくる。今回は現代人のモノ所有の傾向と時代を超えて愛されるコンテンツに不可欠なIP(知的財産)に着目し、このトピックを紐解いていく。
【画像で比較】実は似ている!?“たまごっち”と“Royal Pop”
●機能からの解放とウェアラブル・アート化
第4次ブームと呼ばれる現在のたまごっちは、単に育成ゲームを楽しむだけのものではない。ネックストラップで首から下げたり、バッグにチャームとして着けたりと“身に纏うアクセサリー(ウェアラブル・アート)”として世界中で親しまれている。腕時計ではなく、あえてポケットウオッチ(懐中時計)という形態で登場したRoyal Popにも、これとまったく同じ狙いがあるといっていいだろう。
スマートフォンの普及によって、私たちは時刻を知るために手首を縛られる必要がなくなった。その結果、時計もたまごっちも、“時刻を知る・ゲームで遊ぶ”という本来の機能とは別に、自己表現のためのアクセサリーとしての役割が大きくなったのである。デジタルに囲まれあらゆる効率化が進む現代において、この“ちょっと不便で愛おしいアナログなギミック”に本能的に心を惹かれるのかもしれない。

本来の使い方以上に“身に纏うアクセサリー(ウェアラブル・アート)”としての側面が注目を集めるたまごっち(左)とRoyal Pop(右)
●“持続可能なキャラクターIP”としてのたまごっち
しかし、両者にはビジネスモデルとして決定的な相違点が存在する。それは“持続可能なIP(知的財産)化”へのアプローチだ。
たまごっちが誕生から30年近く経ったいまも世界中で愛され、度重なる再ブームを巻き起こせているのは、単に懐かしさやノスタルジーだけではない。ドット絵のキャラクターたちがもつ普遍的な魅力、アニメやグッズ展開、さらには時代に合わせたタイアップによって“キャラクターを軸とした持続可能なIP”としてのエコシステムを確立したからだ。モノとしての寿命を超え、キャラクターという魂が生き続ける限り、たまごっちは何度でも形を変えてリバイバルできる強さがある。

多様な商品を展開するたまごっち。キャラクターというIPを軸に、何度でも形を変えてリバイバルできる
対して、スウォッチ×APのRoyal Popはどうだろうか。同作は確かに、ロイヤル オークの八角形ベゼルやビスといったデザイン要素をポップに昇華させ、爆発的な話題を生み出すことには大成功した。しかし、ここにはたまごっちのような情緒的なキャラクター性、すなわちIPとしての持続性がない。
スウォッチが得意とする名門の意匠をプラスチック(バイオセラミック)化し、手の届く価格帯で大衆にリーチするというコラボ手法は刺激的ではあるものの、消費者が所有欲に満たされてしまうと、一気に飽きられてしまうリスクを常に孕んでいる。キャラクターのような自走する愛着の対象(IP)にまで昇華できていないRoyal Popは、一歩間違えれば数年後には“2026年に一時流行したポップな懐中時計”という単発のカルチャー消費で終わってしまう可能性も否定できない。