
右は毎時1万9800振動のCal.5740B搭載のロードマーベル。左は毎時3万6000振動のCal.5740Cを搭載するロードマーベル36000
業界唯一のアンティーク時計専門誌「LowBEAT(ロービート)」が主催する愛好家向けの販売イベント “アンティーク時計フェア in 銀座”も8月8日・9日の開催まで残り3週間ほどに迫った。
当イベントも今年で7回目となるが、販売されているのはもちろんロレックスをはじめとするスイスブランドが圧倒的に多い。しかし近年徐々に扱いが増えているのがセイコーだ。品質が良いうえにいまだに手の届く価格帯のため日本人愛好家からも見直されてきているのを感じる。
今回はそんな1960年代のセイコー ロードマーベルについて取り上げる。数万円から十数万円で買える比較的に手の届きやすいものの、当時はグランドセイコー第2世代、セルフデーターに次ぐ品質だった。
セイコーは1956年にムーヴメントを海外製品の模倣ではなく初めてセイコー独自の設計で開発。その手巻きムーヴメントを搭載する「マーベル」を製品化した。この後セイコーはこのムーヴメントをベースにブラッシュアップしながら次々に派生モデルをリリースする。
ロードマーベルもそのひとつでマーベルをさらに高級化、高精度化を図ったセイコー初の高級ラインとして1958年にリリースされた。
そして、ここに掲載した写真の個体は、64年から製造が開始された手巻きムーヴメント、キャリバー5740が搭載されたモデル。ただ注意してほしいのが同じロードマーベル名だが初代の直系ではない。実はマーベルのもうひとつの派生モデル「クラウン」(59年)の上位機種“クラウンスペシャル”のムーヴメントをベースに改良を加えたものが採用されているからだ。
そのため実質的にはクラウンスペシャルの後継機としての役割を担っていたようで、愛好家からはクラウンタイプとして初代とは区別されている。ちなみに後に57GSことグランドセイコー第二世代のベースムーヴメントになったのもクラウンスペシャルだ。

毎時1万8000振動のCal.5740Aを搭載するクラウンタイプのロードマーベル初期モデル。スナップバック式裏ブタを採用。10万円アンダーでも手にはいる
そしてこのキャリバー5740は短期間に3度も改良されている。64年から製造された毎時1万8000振動のCal.5740Aから66年には毎時1万9800振動にアップしたCal.5740Bに移行。そして輪列パーツを再設計して市販の国産時計としては初となる毎時3万6000振動に超ハイビート化されたCal.5740Cが67年に登場。文字盤にはその証として“LORD MARVEL 36000”と表示された。
ケースも初期はスナップバック式裏ブタだったが65年頃からはスクリューバック式の防水ケースとなって実用性が高まった点も見逃せない。もし初期のCal.5740A搭載の個体(写真)を狙う際はこの点もチェックしたほうがいいだろう。
さて、ここからが本題。トップの写真をご覧いただきたい。右はCal.5740B搭載の66年製ロードマーベル、左はCal.5740C搭載の68年製ロードマーベル36000である。アプライドのアラビアインデックスを使ったほぼ同じデザインながら、モデル名はクラシックな筆記体からモダンなブロック体に変更され、ムーヴメントの性能もまったく違う。
ロードマーベル36000は安定した性能と耐久性という点でも評価が高く、なんと11年間ものロングセラーとなったほどの実力機。対してCal.5740Bは過渡期のキャリバーのため製造されていた期間は66年からわずか1年ほど。当然、流通する個体数はロードマーベル36000に比べると極めて少ない。
もちろんコンディションにも左右されるが、購入を考えるなら一般的には迷わず高年式で高性能一択になるのだろう。しかし、ことアンティーク市場において希少性は重要なファクター。さてどっちにするか悩ましき選択なのである。
[セイコー ロードマーベル]
Ref.5740-8000。SS(35mm径)。手巻き(Cal.5740B)。1966年製。16万5000円
[セイコー ロードマーベル3600]
Ref.5740-8000。SS(35mm径)。手巻き(Cal.5740C)。1968年製。14万3000円
協力◎JAPAN VINTAGE WATCH SHOP
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