上半期に世界で最も売れたものとは? ロレックス販売ランキング(1位〜5位)|【ロレックス】通信 No.116

 先週のロレックス通信No.115に引き続き、ドイツのカールスルーエに本拠を構える世界最大級の高級時計専門マーケットプレイス “Chrono24 (クロノ 24 )”が2021年1月1日から6月27日までの上半期に最も販売されたロレックスのモデルとは何だったのかについて、今回は上位ベスト5をお届けする。

 ではその前に、前回の結果6位から10位についておさらいすると以下のとおりである。

第6位|デイトナ(Ref.116520)
第7位|サブマリーナーデイト(Ref.16610)
第8位|エクスプローラー II(Ref.216570)
第9位|GMTマスター II(Ref.126710BLRO)
第10位|デイトジャスト(Ref.16233)

 5位中に3モデルも旧型が入っている。これはChrono24で販売されている腕時計は、新品だけでなくUSED品からアンティークまでと幅広いためなのだが、昨今の世界的なUSED需要とロレックス現行モデルが高額になっていることも少なからず関係しているのかもしれない。

 では早速5位から1位までを見ていくことにしよう。

第5位|GMTマスター II (Ref.116710)

写真:「ゼロからわかるロレックス」より

 2005年にベゼルにブラックセラミックを初採用してリニューアル登場を果たしたGMTマスター II 。このステンレスタイプはその2年後の2007年にリリースされた。それ以前のGMTマスター II は正直言って日本での人気はあまりなかった。それがこのモダンなデザインになってからというもの多くの支持を集め、常にベスト5に入る人気モデルとなったのである。その後13年に黒青ツートンベゼル(通称バットマン)が登場すると今度はそちらに注目が集まり、この黒ベゼルタイプは影が薄くなってしまった。そのためか新型ムーヴメントへの移行に伴う2019年のマイナーチェンジではこの黒のみが生産終了となってしまったのである。派手目なツートンベゼルよりは着けやすさという点で実用性は高いはずなのになぜ廃番にしてしまったのか理解に苦しむ。Chrono24での相場は140〜180万円台。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.3186)

第4位|サブマリーナーデイト(Ref.116610LV)

写真:「ゼロからわかるロレックス」より

 現行モデルのひとつ前で2020年に生産終了となった旧型サブマリーナーデイト、通称グリーンサブだ。実は現行モデルと違い文字盤までグリーンという派手なカラーリングにもかかわらずコロナ禍になる前の2019年にインバウンド需要で一気に何十万円も高騰したモデルのひとつとなった。海外の愛好家、特に中国人に人気が高く需要が伸びたことが実勢価格を押し上げた。その背景には縁起のいいヒスイの色に似ているためと言われていたが、いずれにせよ世界的にはやはり通常のサブマリーナーデイトよりも派手なほうが人気が高いということがこの結果からもうかがえる。Chrono24での相場は240〜280万円。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.3135)

第3位|デイトナ(Ref.116500LN)

写真:「ゼロからわかるロレックス」より

 2016年に実施された16年ぶりのモデルチェンジによって登場した現行のデイトナである。デイトナとしては初となるブラックセラミックのベゼルが採用され、今回6位にランクインした旧型に比べてデザイン的にもかなりモダンになったことで世界的にブレイクした。日本でも実勢価格は人気の高い白文字盤で400万円以上と現行デイトナ史上において最も高値を記録している。そしてこれは日本だけでなく世界的にもこの水準はあまり変わらない。それにもかかわらず販売総額ではなく販売本数で第3位に入るということ自体に驚かされる。Chrono24での相場は380〜450万円。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.4130)

第2位|デイトジャスト 41(Ref.126300)

写真:「ゼロからわかるロレックス」より

 1990年代後半から2000年代前半にかけての時計ブームにのって、時計のトレンドも大型化傾向が強まり40〜42mmが大きさのひとつの目安として主流となりつつあった。そのためロレックスは36mm径の一般的なデイトジャストを5mm大型化した上位機のデイトジャストIIを2009年に投入した。このRef.126300は、3200系の新型ムーヴメントが搭載されて2016年にマイナーチェンジを果たした後継機のデイトジャスト41だ。旧型のデイトジャスト II はインデックスの大きさやベゼルの太さなどとのバランスが悪く頭でっかちに見えたため、正直なところデザイン的に日本では不評だった。この41になってからはその点が払拭されたため36mmタイプよりもいまや人気が高い。Chrono24での相場は110〜140万円。SS(41mm径)。自動巻き(Cal.3235)

第1位|デイトジャスト41 (Ref.126334)

写真:「ゼロからわかるロレックス」より

 驚いたことに2位に続いて何と1位にもデイトジャスト41がランクインした。2位との違いはベゼルにだけ18金ホワイトゴールド素材が使われている点だ。この山形にカットされたフーテッドベゼルに5列のジュビリーブレスは、ある意味デイトジャストの王道スタイルである。しかもシンプルでスタンダードなデザインのため年齢はもちろん使用シーンもあまり限定されないことから使い勝手では確かに1番だ。さらに41mmであれば海外ユーザーでもサイズ感は逆にちょうどいい。つまり、使う視点で考えると最も現実的なモデルが結局のところ多くの支持を集めたということになる。Chrono24での相場は120〜160万円。SS(41mm径)。自動巻き(Cal.3235)

 さて、今回の結果についてみなさんはどのように感じただろうか。ロレックスの場合は、日本にいると高騰するスポーツモデルばかりがクローズアップされる傾向にあるため、デイトジャストが1位と2位というのは意外に思われた人も多いのかもしれない。

 今回のデータは、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスの欧米4カ国に加えて日本と香港を加えた6カ国においてChrono24を利用して申し込まれた販売数に基づくものだが、3位のデイトナと4位のグリーンサブを見るとやはりいまのロレックス市場の異常さが如実に現れており、しかも通常のサブマリーナーデイトではなくグリーンサブが4位というのも海外ならではの傾向が強く表れている。またその一方では1位と2位にデイトジャストがランクインするという、いくらスポーツモデルが世界的に注目されているとはいっても、実際に売れているのはいまなお現実的なモデルなのだという点もおもしろい。それにしてもエクスプローラー I と通常のサブマリーナーデイトの最近のレファレンスがベスト10に入っていないというのはかなり驚きである。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!