【セイコー創業の地がモチーフ】明治末期にハイカラな色のひとつであった“金春色”を採用した限定機を本音レビュー

 ここのところ和のテイストを色味や素材で表現したモデルが目立つセイコーだが、創業140周年のアニバーサリーモデル第3弾では、創業の地・銀座をテーマに取り上げている。プロスペックス、プレザージュ、アストロン、ルキアのセイコー主要4ブランドでそれぞれ限定の記念モデルをリリースしたのだが、今回はそのなかからプロスペックスの“1959 アルピニスト 現代デザイン”をピックアップして紹介しよう。

セイコー プロスペックス 1959 初代アルピニスト現代デザイン セイコー創業140周年記念限定モデル
■Ref.SBDC151。SS(38m径/12.9mm厚)。20気圧防水。自動巻き(Cal.6R35)。世界限定3500本。8万2500円

 アルピニストはオールドセイコーを代表する名機、ローレルをベースに1959年に発売されたモデルだ。当時は日本が豊かになっていく過程で登山やスキーなどのアクティビィティの人気が上がってきたこともあり、そうしたシチュエーションでも使えるような時計、いわば国産スポーツウオッチの嚆矢(かぶらや)として誕生した。防塵を高めつつ、文字盤のインデックスを夜光仕様にするなど視認性の向上も図られ、実用性の高い時計として高い人気を得た。そのオリジナルをモチーフにしたアルピニストの復刻版・デザインの現代解釈版が2021年春にリリースされたのだが、レトロなルックスでリリース直後から市場でもよく売れている模様だ。

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 今回の140周年アニバーサリーモデルでは、この現代解釈版アルピニストをベースに“銀座”のエッセンスを取り入れている。具体的にはダイアルのデザインだ。秒針は明治末期に最もハイカラな色のひとつとされた緑を帯びた青“金春色(こんぱるいろ)”を採用。さらにダイアルの装飾パターンに、銀座中央通りの石畳を彷彿させる紋様を入れている。

 ダイアルのトーンは絶妙に柔らかい中間色で、銀座の高級感や落ち着いた佇まいをうまく表現していると感じる。また石畳のパターンは、実機を見てみると想像以上に石畳で、内周と外周でモザイク状に変化するトーンの違いが面白く、意外にいままでありそうでなかったダイアルのスタイリングだ。バーとくさび型の組み合わせによるインデックスも立体感がある。3針とデイト表示のみのダイアルデザインはうまくまとまっており、派手さはないがそれだけに飽きが来ないデザインだ。38mmというケースサイズも程がいい。ケースフォルムはオリジナルと異なって意外にがっしりしているが、ゴツすぎるということはないし、堅牢さを求めるうえではこのくらいで当然だろう。

 搭載ムーヴメントは6R35。セイコーではダイバーズなどによく用いられるミッドレンジの実用機だが、パワーリザーブが70時間と強力なのがうれしい。6振動ロービート機ゆえの安定した動きが持ち味で、メンテナンスさえ怠らなければ長く実用に耐えるだろう。シースルーバックなのでムーヴメントの動きを視認することも可能だ。

 独特のダイアルのトーンは神秘的で高級な印象で、昨今流行りのグリーンダイアルの時計としてもちょっと異色だし、なかなか個性が光っている。アンダー10万円の時計としては作りもいいし、コストパフォーマンスは高い。限定モデルということですでにソールドアウトとなっている店舗も多いようだが、この色味とダイアルデザインが気になるなら、ぜひ一度実機をチェックしてみてほしい。

 

【問い合わせ先】
セイコーウオッチお客様相談室 TEL.0120-061-012
https://www.seikowatches.com/jp-ja/special/140th_limited_3rd/

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎編集部