北村 総一朗 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.24)

北村さんの念願が叶い手に入れた、フランク・ミュラーコンキスタドール(右)と、奥様に「10年近く前に買ってもらった」というグランドセイコー(左)

 

かつて芝居の世界に憧れ、四国・高知から東京を目指した1人の青年がいた。北村総一朗、68歳。新劇一筋に生きてきた男は、60歳の年に出会った大人気ドラマの警察署署長役で一気に大ブレイクを果たし、日本中から愛される存在となった。

「腕時計に興味を持つ余裕はなかったね。お金がなかったから。映画スターなんかと違って、僕らは舞台役者。しかも新劇でしょう。一緒に住んでた友人が博打にハマって、コタツまで質に入れちゃうような生活だったから(笑)。それが3年ぐらい前にね、ある日ふとデパートで買い物をしていて見かけたんだよ。フランク・ミュラーを。なんかドキッとしたねぇ。クラシカルななかに新しさもある、非常に芸術的なデザイン。それが僕の心を捉えたのよ」

デザインに対する思い。それは少年時代にまで遡る。


なんかドキッとしたねぇ。クラシカルななかに新しさもある、非常に芸術的なデザイン。
それが僕の心を捉えたのよ

「僕らは本当にギブ・ミー・チョコレートの時代に育った。で、アメリカ人を初めて見たときに一番、驚いたのがほかならぬデザインだったんだ。チューインガムの包装紙、タバコのパッケージ、石けんの箱……。それらが強烈な文化ショックだったんだよね。何よりもまず、デザインを見て『こりゃエライ国だ』という印象を刷り込まれた。だから、デザインというものはその国を表すぐらいの大事なものだという意識がすごくある。実はデパートで見たときは、フランク・ミュラーのことをあまり知らなかったんだけど、どうしても忘れられなくって自分で調べたよ」


お金のない時代が長かったから、やっとつかんだ逸品という思いがすごくある。
ありがたみも感じるし、宝物だよ。

歴史、技術、人となりがわかるにつれ、その腕時計を身に着けたいという欲求は強まっていったという。

「結構、思い切って買ったのよ(笑)。さっきも言ったけど僕、お金のない時代が長かったから、やっとつかんだ逸品という思いがすごくある。ありがたみも感じるし、宝物だよ。自動巻きはやっぱりいいよね。それまで女房に買ってもらったグランドセイコーをしていたんだけど、あまりにも正確過ぎてね。なんか自分が縛られているような気がしちゃって。その点、自動巻きは誤差が出るでしょう。車のハンドルお同じで、時計にも人間にも遊びがなくちゃいけないよ」

時計を愛し、芸術を愛し、人生を愛する。そんな北村さんが今後やりたいと思っていること……。それは。

「ヒマができたら女房としばらく旅行に行きたいね。ウチはすごく仲がいいんだよ。自分で言うなって(笑)」

すべては最愛の人がいてこそ、のお話というわけだ。

 

北村 総一朗俳優)
SOICHIRO KITAMURA 1937年9月25日生まれ。高知県出身。高知大学農学部卒業後、役者の道を志し上京。61年、研究生として文学座入り。同期に小川真由美、橋爪功、草野大悟、樹木希林、岸田森、寺田農などがいる。その後、劇団雲を経て劇団昴に所属。97年のドラマ『踊る大捜査線』の署長役で脚光を浴び、一躍人気者に。飄々としたキャラクターと、独特の語り口で、現在はドラマ、映画だけにとどまらない幅広い活躍を見せている。

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