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実機レビュー!何が買いなのか調べました。【予算10万円台①】

 いまミドルレンジ以下の価格帯のラインナップが非常に充実している。2019年に発表された新作モデルをいま改めて振り返ってみても、話題を集めた良作の多くはこのプライスレンジであった。
 ただ全体のアイテム数で言えば、おそらく以前とさほど変わらない。実際には、年々、目の肥えていく時計ファンに対して、メーカー各社が積極的に質やデザイン性の向上に取り組んだ結果、目を引く魅力的なモデルが増えたということだろう。

 そこで、お手頃な“10万円以下”から“10万円台”“20万円台”そして“30万円台”まで、四つの価格帯で購入できる機械式腕時計を編集部がピックアップ。その一つひとつを編集部が実際に見て、触って、試着した、その感想を本音でレビューする。いま何が買いのモデルなのか。編集部のリアルな意見を、ぜひ購入の際の参考にしてもらいたい。

【予算10万円台①】
ワンランク上の仕上がりや実用性
外装クオリティや素材に注目


 10万円台というプライスレンジでも、基本的に搭載されているムーヴメントは汎用エボーシュだ。
 では、どこにコストが掛かっているのかと言うと、ケースや文字盤といった外装である。ケースの磨きをより入念に施したり、文字盤に手の込んだ装飾を加えたりなど、美観を追求したモデル。そしてチタンなどの素材を採用しスペックの底上げを図ったモデルなど、やり方は様々だが、ワンランク上の美観や実用性を備える点がこのプライスレンジの時計の特徴と言えるだろう。

 また外装と言うと文字盤やケースが注目されがちだが、このプライスレンジではブレスレットもよくできたものが多い。見た目の美しさもさることながら、耐久性や装着感も追求されたブレスレットもあるため、こちらも注目してみるといい。

》Model 1
SEIKO セイコー
プレザージュ 有田焼ダイヤルモデル


 ほうろう、漆などの伝統工芸と融合してきたセイコー プレザージュの最新作は、有田焼文字盤を採用したずばり“有田焼ダイヤルモデル”だ。著名な陶工、橋口博之氏の監修により製作された文字盤は、磁器ならではの独特の質感を生み出しつつ、文字盤としての強度を両立させるため、新たに高強度の磁器素材を開発。従来の約4倍以上の強度を実現し、実用にも耐えうる文字盤を作り上げた。
■Ref.SARX061。SS(40.5mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.6R35)。18万円(税抜き)

 

》Detail Check

【特別に製作された有田焼文字盤】本作の製造にあたって磁器ならではの独特の質感を生み出しつつ、文字盤としての強度を両立させるため、新たに高強度の磁器素材が開発された。

【ムーヴメント】とりわけ外装にコストを掛けられたモデルだが、一方で約70時間のパワーリザーブを備えるなど、この価格帯では優秀な実用ムーヴメントを搭載する点も見逃せない。

【実際に着けてみました】高級時計などで採用されるエナメル文字盤とも、また違った質感を楽しめる有田焼文字盤。この質感に合わせて、細く繊細な針が採用されており、上品かつ温もりある雰囲気が魅力だ。ちなみに国産初の腕時計、ローレルの意匠が取り入れられている。

【問い合わせ先】
セイコーウオッチお客様相談室 TEL.0120-061-012

》セイコー公式サイト
https://www.seikowatches.com/jp-ja

 

》Model 2
HAMILTON ハミルトン
ジャズマスター シンライン オート

 高いファッション性と快適な着用感を両立させたシンライン オート。ケース厚を約7mmまで抑えるため、秒針をなくしたシンプルな2針仕様だが、文字盤にモスグリーン系のカラーを採用することよって個性を際立たせた1本だ。またベルトは、取り外しが容易に行えるイージークリックシステムを採用。その日気分によって付け換えて楽しむこともできる。
■Ref.H38525561。SS(40mm径)。5気圧防水。自動巻き(Cal.2892-A2)。10万4000円(税抜き)

》Detail Check

【立体的な造形】ケース厚を7mmに抑えながら、アップライトインデックスや外周をカーブさせた文字盤を採用するなど、立体感ある造形となっているのはさすが。

【ムーヴメント】Cal.ETA2892-A2搭載。ロングパワーリザーブ仕様のエクスクルーシブ・ムーヴメントではないのはやや残念だが、信頼性はもちろん高い。

【実際に着けてみました】一般的には地味な印象の強い2針モデルだが、本作は文字盤にモスグリーン系という個性的なカラーを採用し、さらにサンレイ仕上げを施したことで存在感がある。また重量は約53gと軽量なうえ、リューズが小振りなため、装着感はかなりいい。

【問い合わせ先】
ハミルトン / スウォッチ グループ ジャパン TEL.03-6254-7371

》ハミルトン公式サイト
https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/

 

》Model 3
TISSOT ティソ
ジェントルマン オートマティック

  1960年代に同社が展開していたスポーツモデルをベースに、ドレスウオッチのようなエレガントな意匠にリデザインされたジェントルマン。ローズゴールドベゼルの柔らかな輝きと、シャープな十字デザインが絶妙なコントラストを生んでいる。またシリコン製ヒゲゼンマイを採用した80時間パワーリザーブを持つ“パワーマティック 80 シリシウム”を搭載。コストパフォーマンスの高さも大きな魅力だ。
■Ref.T927.407.41.031.00。SS、RGベゼル(40mm径)。5気圧防水。自動巻き(Cal.C07.811)。15万4000円(税抜き)

》Detail Check

【ベゼル】やはり特筆すべきは、メッキなどではなく、正真正銘の18金をベゼルに使用している点である。それでいて10万円台という価格はかなりお値打ち感がある。

【実際に着けてみました】約160gのずっしりとした重量感は、まさにベゼルが本物の金であることの証し。素材の価値だけ考えても、この価格設定に驚かされるが、さらに実用的なパワーマティック 80 シリシウムを搭載しているというから凄い。まさに“ワンランク上”を楽しめる戦略モデルである。

【問い合わせ先】

ティソ TEL.03-6254-7361

》ティソ公式サイト
https://www.tissotwatches.com/ja-jp/

文◎堀内大輔/写真◎笠井 修

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