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【気になるちょい古時計|no.09】 2001年にカルティエがメンズ専用として発表した“ロードスター”

 カルティエは、名門ジュエラーというだけでなく、腕時計の世界においても歴史のあるブランドである。しかしながら、どちらかというジュエラーとして女性のイメージのほうが強かったのは否めない。そんなカルティエが明確にメンズ専用の腕時計コレクションとして2001年に打ち出したのが今回取り上げた“ロードスター”である。

 2000年代前半といえば、ちょうど高級機械式時計市場が右肩上がりに伸びていた時代である。2000年にはセラミックケースを採用してセンセーショナルなデビューを果たしたシャネルの“J12”や、ブルガリに至っても02年にスポーツ系コレクション、ディアゴノの上位機種として陸・海・空をテーマにプロフェッショナルシリーズをリリースするなど、時計専業メーカーではないブランドが、メンズラインを拡充し、機械式時計へ積極的に参入していた、ちょうどそんな時代であった。

 つまり、カルティエにとってもメンズラインの強化はある意味必定で、そんななかで投入されたのがこのロードスターだったというわけだ。

翌年の2002年に登場したカルティエのロードスター クロノグラフ。スポーツカーをイメージしたという美しい曲線で構成された独特のトノー形ケースが目を引く

 このロードスター、その名前からもわかるように、疾走する50〜60年代のスポーツカーをイメージして作られている。そのため筆者自身も最初に見たときは柔らかな曲線でまとめられた流線形のトノーケースが印象的だったことを覚えている。

 また、3時位置の日付けを拡大表示するレンズについても、クラシックなスポーツカーのヘッドライトのデザインを取り入れたものらしいが、その影響でスモールセコンドが見えにくい。確かにぜったいハッキリと見えないとならないものではないものの、その上にレンズをおいてしまうあたりは、さすがに時計専業メーカーにはできない芸当なのではないか。

 そしてもうひとつ当時注目された点がある。それは工具を使わずレバー操作だけのワンタッチでブレスレットと付属するトワルストラップと呼ばれるスポーティなベルトとの交換が簡単にできる仕組みになっていたところである。現代でこそ様々あるが、当時はかなり珍しいことだった。

中央のレバーを倒すだけでワンタッチで外れる仕組みは当時としては画期的だった

 そんなロードスターだったが2010年にリニューアルが実施され、そして登場した第2世代の“ロードスター S クロノグラフ”からは、よくも悪しくも個性となっていた、ケースラグ四カ所にあったビスと日付け表示上の拡大レンズが無くなり、あまり面白みのないデザインとなってしまった。そしてデザイン的なテコ入れも虚しく2012年頃に生産を終了する。

 当時のラインナップはここに取り上げたクロノグラフのほかに、スタンダードな3針モデルとGMTモデルが用意されていた。素材のバリエーションもステンレスのほかにコンビモデルやホワイトとイエロー、両方の金無垢モデルもラインナップしていたようだ。

 現在の中古の実勢価格は、クロノグラフで40万円台後半から60万円台前半。3針だと20万円台といったところである。

 なお時期はハッキリしないが、後になってクォーツで小振りな女性向けラインも新しく加わっている。

カルティエ
ロードスター クロノグラフ
■商品データ
製造期間:2001(クロノグラフは2002年)〜2012年
型番: W62020X6
素材:ステンレススチール
ケースサイズ:42mm
防水性:100m防水
駆動方式:自動巻き
税抜き参考定価:92万円(2007年当時)

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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