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海外・国内時計メーカー問わず、なぜ最近多いグラデーション文字盤!|OUTLINEニュース no.42

アウトライン・セコンドセッティングのブルーグラデーションモデル。古典的なデザインに対してちょっと派手めなブルーはチャレンジだったが、意外にもまわりが黒っぽく締まっているため逆にオシャレに仕上がった

 高級時計の世界では2020年頃から派手なカラー文字盤が話題となっているが、カラーでも中央から外周に向かって徐々に暗い色に変化する、いわゆるグラデーション仕様のカラー文字盤は、近年でいうと、おそらくはそれ以上に増えているようにも感じる。

 実は、筆者がプロデュースする時計ブランド“アウトライン”でも、1940年代の軍用パイロットウオッチをモチーフにした最新作“アウトライン・セコンドセッティング(定価5万5000円)”のバリエーションとして、今回ブルーグラデーション文字盤を採用したほどである。

2020年の新作として登場したロレックスのオイスターパーペチュアル。このターコイズブルーは、一時600万円という恐ろしいほどのプレミアム価格まで高騰した

 そもそもカラー文字盤の火付け役といえば、2020年に登場したロレックスのオイスターパーペチュアルの派手なターコイズカラーが有名だ。そのあまりの異常さから、その後も各社からは、ここぞとばかりにカラー文字盤の新作が市場に投入されたことは記憶に新しい。

 しかも、硬派なイメージだった高級時計メーカーまでもが「なんで?」と思ってしまうようなカラー文字盤シリーズを展開するなど、その加熱ぶりは異常とさえ言えるほどだ。

 確かに見た目には綺麗だったりするが、実際問題どれだけの人がそれを買うのだろうかと、時計を作って売っている身としては、ふといつも疑問に思ってしまうのである。

グラデーションを表現するうえでポイントなのが、グラデーションの幅をなるべく狭くして濃淡をハッキリと出すこと。それがわからず今回は何度も失敗した

 一方、同じカラー文字盤でも、グラデーションカラーだと、たとえ派手めの色を採用したとしても、全体がその色1色だけよりは、周りが黒っぽく締まってくるために確実に落ち着いて見えてくる。今回はそんな狙いからセコンドセッティングでも採用してみたというわけである。

 時計の新作を作る際に、選択肢としてバリエーションを用意することは必要なこと。その際にてっとり早いのが文字盤の色を変えることだ。ただ最近は、一般的なブラック、ホワイト、シルバー、そしてネイビーではドレス系モデルであればいいが、スポーツ系など存在感のあるモデルの場合は、これらの一般的な色ではなかなか個性を出しにくい。特にカラー文字盤がトレンドのいまはなおさらだ。

 ただ、カラー文字盤は個性を出しやすい反面、好き嫌いがはっきりと出るため売れないリスクも高まる。つまり個性を出しつつそのリスクを減らすひとつの手法としてグラデーション文字盤が多く使われるようになったのではないかと思う。

 もちろんグラデーション文字盤自体は昔からあった。特にカラー文字盤ブームといえる1970年代には様々なグラデーションをあしらったデザインが数多く生まれている。ただ海外メーカーだけでなく国産メーカーにおいても、これだけ最近増えているのはやはり昨今急激に浮上してきたカラー文字盤ブームが影響していることは確かだろう。

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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