メンズ向け腕時計で一番に人気が高いジャンルといえばクロノグラフウオッチだろう。このクロノグラフだが「=ストップウオッチ」というふうに捉えられがちだが厳密にいうと違う。
ストップウオッチとは、クロノグラフの中のひとつの機能のことであって、時間の計測および記録する機能全体を包括してクロノグラフと呼ぶ。つまり、積算カウンターやタキメーター、テレメーターなどの計測スケールなども含まれているのだ。
このようにクロノグラフには様々な計測スケールが存在する。それについて以前に筆者は「【男の物欲を刺激する】“クロノグラフ”に個性を与える12の計測スタイル」(関連記事参照)と題して、いろいろなクロノグラフの顔の変化を紹介した。
ただその記事のなかでは触れなかったのだが、じつは1940年代以降のクロノグラフウオッチには、30分積算計の目盛りにいま考えると「クスッ」と笑えるようなある特徴があるのだ。
上に掲載したブライトリング・ナビタイマーの写真をご覧いただきたい。30分積算計の目盛りをよく見ると、3分、6分、9分とこの3カ所の目盛りが長く伸びていることがわかるだろう。おそらくは昭和世代の方はピンときたのではないだろうか。
これは「テレフォンユニット(TELEPHONE UNIT)」と呼ばれるもので、かつては日本もそうであったように、電話の料金は3分単位で加算されていた。つまりそれをカウントするための目印として当時のクロノグラフに設けられていたものなのである。
当時のクロノグラフウオッチ所有者にとって、積算計のメリットが一番に実感できた瞬間だったのかもしれない。そのためか1940年代以降のクロノグラフウオッチには、メーカーを問わずこの目盛りを備えている個体は非常に多い。
ちなみに、現在の公衆電話から固定電話へ掛けた場合の料金をNTT東日本のホームページで調べてみたところ、筆者もほとんど気にしなかったため知らなかったが、昼間の時間帯で、しかも区域内であっても3分ではなく56秒と、3分の1以下になっていることに驚いた。
さて、テレフォンユニットの例として使用した写真のブライトリング ナビタイマーは、いまでは絶版となってしまったが2015年4月20日に刊行したアンティークウオッチ専門誌「Low BEAT No.7」の表紙にもなった初代ナビタイマーである。しかもゴールドケースという極めて希少な個体だ。
【関連記事】
■【男の物欲を刺激する】“クロノグラフ”に個性を与える12の計測スタイル
■夏にこそ似合うダイバーズウオッチ。その回転ベゼルはなぜ右回転できないのか?
■【SEIKOメカクォーツ×逆パンダ】手頃でカッコいい古典顔クロノグラフはやっぱりこれでしょ!
■【軍用時計のデザイン】40年代のイギリス軍向け“ダーティ・ダース”によって確立された!?
■【レトロなシャカシャカ感がたまらん】70年代にイギリス空軍も採用した珍しいハシゴ型ブレス仕様がショップ限定で登場!