●世界を震撼させた巧みなマーケティング戦略
1927年、オイスターケースの実力は世界を震撼させる。イギリスの女性スイマー、メルセデス・グライツがドーバー海峡を泳いで横断する際、その腕にはオイスターが輝いていた。荒波に揉まれながらも正確に時を刻み続けたその姿は、防水時計の信頼性を世に知らしめる決定的な出来事となった。
また、20年代末〜30年代にかけてオイスターは、金魚鉢に入れられて店頭販売(展示)されていたという逸話もある。これも単なる話題作りではなく、当時のロレックスの防水技術を証明するための非常に効果的なマーケティング戦略だったのだ。
●受け継がれる“OYSTER”の称号
この防水性能を支えているのは、極めて高い加工精度だ。ロレックスのケースは、金属を削り出す“切削”ではなく、金属を何度もプレスして仕上げる“鍛造(たんぞう)”によって作られる。コストはかかるが、金属密度が高まり堅牢性が増す鍛造ケースは、長年の使用や研磨に耐え、美しい輝きを保ち続ける。他メーカーが同等の防水ケースを作れるようになるまでに、さらに30年近い歳月(1950年代以降)を要したことからも、当時のオイスターがいかに革新的であったかがわかるだろう。

誕生から100周年を迎えたいまも、ロレックスのケースは進化を続けながらその伝統を守り抜いている。その証として、このケースを採用したモデルの文字盤には、いまなお誇らしげに“OYSTER”の文字が刻まれている。
それは、単なる防水性能の証明ではない。困難を克服し、腕時計を“一生モノの実用時計”へと昇華させた、ロレックスの不屈の精神そのものなのである。
【「性別の垣根を超える腕時計」過去連載記事】
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文◎市村 信太郎
