皆さんは、昨今の腕時計はメンズサイズであればケース径40mm以上が当たり前という風潮や、時計売り場を見ても大きな時計ばかりが並んでいることに疑問を感じたことはないだろうか。
体格が良ければ違和感なく装着できるかもしれないが、腕が細く、時計が手首からはみ出てしまい、腕時計につけられてしまっているような状態や、時計が重すぎて肩が凝ってしまった経験をしたという人も少なくないはずだ。
そこで今回は、小ぶりな時計を探す人に向けて、コンパクトなモデルが多く存在するアンティークウオッチの中から、おすすめのモデルを紹介していく。
ウォルサム
アメリカーナ

【写真の時計】ウォルサム アメリカーナ。SS×GP(36mmサイズ)。自動巻き(Cal.HT148、AS1873ベース)。1970年代製。取り扱い店/WatchTender銀座
まず1本目に紹介するのは、1970年代に製造されたウォルサムのアメリカーナだ。
金張りのケースとローマンインデックスのホワイト文字盤を合わせた、シンプルながらも華やかさを感じさせるデザインが特徴的である。文字盤の繊細な印字やエンブレムの丁寧な作りからは、手間をかけて製造された時計であることを感じられる。
ムーヴメントには、ETAと並んで有名なムーヴメントサプライヤ―であったア・シールドの1873をベースとしたものを搭載している。あまり聞いたことのないムーヴメントかもしれないが、かつては数多くのメーカーが採用したムーヴメントであり、その信頼性は高い。肝心のケースサイズは36mmの程よい大きさで、着用していても使用者の動きを妨げない絶妙なサイズ感と、文字盤のフォントのバランスが美しい、おすすめの1本だ。
セイコー
シャリオ

【写真の時計】セイコー シャリオ。SS(34.5mm径)。手巻き(Cal.2220)。1970年代製。取り扱い店/WTIMES
続いて紹介するのは、1970年代に製造されたセイコーのシャリオ。
手巻き式の時計であり、厚さ10mmをきる薄型かつ34.5mm径のスリムなケースは、同時期に同社から発売されていた高級薄型ドレスウオッチのUTD(ウルトラ・シン・ドレスの略)にも似たフォルムで、廉価ながらもエッジの立った造形が魅力的だ。
ネイビーの文字盤とバーインデックスがシックな印象のドレスウオッチで、腕の形に添うような造形のケースが装着性を向上させている。革ベルト以外にも、薄手のミラネーゼブレスレットを組み合わせることでコーディネイトの幅が広がるだろう。
ムーヴメントには、セイコーが量産していた手巻き式のCal.2220を搭載。毎時2万8800振動(毎秒8振動)のハイビートかつ24石の高性能なムーヴメントだ。シャツの袖にも難なく納まる薄さは、現代の時計でもなかなか実現できないだろう。ただし、防水性に劣るドレスウォッチであるため、炎天下の続く日や梅雨時など、湿気や水気を避けて使用することを推奨する。
ブローバ
タイプA17A

【写真の時計】ブローバ タイプA17A。SS(32mm径)。手巻き(Cal.10BNCH)。1959年製。取り扱い店/キュリオスキュリオ
最後に紹介するのは1959年に製造され、アメリカ軍で採用されたブローバのタイプA17Aだ。
ハードユースに耐えうる耐衝撃性と耐水性、耐磁性能を意識した作りこみが特徴的で、光が反射するのを抑えるために、艶消し仕上げがされたケースからは実戦を考慮したミリタリーウオッチらしさを感じる。
ケース径は32mmほどでかなり小ぶりに思えるが、視認性に優れたブラック文字盤やがっしりとしたケースのおかげで、腕元でも十分すぎるほどの存在感を放つだろう。また、ムーヴメントには耐震装置を備えた手巻き式のCal. 10BNCHを搭載。さらに、ネジ込み式の裏ブタのなかには、耐磁性を高めるためのプレートが装備されているため、電子機器の多いデスクワーカーにもおすすめできる。ただし、現代の耐磁性能規格とは異なるため、過信は禁物だ。
今回紹介したモデルは、サイズ感を考慮しつつ、アンティークウオッチ初心者だけでなく、本格的な腕時計を初めて購入する人にとってもおすすめできるモデルをピックアップした。アンティーク品であるため、定期的なメンテナンスや丁寧な扱いは欠かせないが、性能面や整備性の観点から、今後数十年は問題なく使用できる腕時計たちだ。大きすぎず、無理なく使用できる時計は日常生活に溶け込み、良き相棒となってくれるだろう。
今回紹介したような、小ぶりでこだわりの詰まった腕時計。自分へのご褒美や初めてのアンティークウオッチに、ぜひいかがだろうか。
【LowBEAT Marketplaceで小ぶりな時計を探す】
文◎LowBEAT編集部