先月より、各ブランドの歴史的定番モデルをテーマにお届けしている当連載。前回の記事では人気のヴィンテージ・セイコーからグランドセイコーを取り上げたが、今回はロレックスのデイトナとの共通点も多いレーシングクロノグラフ、ホイヤーの“カレラ”だ。
世界が熱狂するカーレース時代の到来を見据えて、手巻きクロノの名機として名高いバルジュー72を搭載し1963年にリリースされたカレラ。
文字盤の見返し部分に5分の1秒スケールを設けるという当時としては革新的なデザインを採用しているのが特徴で、これにより36mm径ながらフェイス部分を大きく見せ、クロノグラフとしての文字盤の判読性が高められている。
これは意外だがカレラ以前には見られなかった仕様で、以降カレラを象徴するデザイン的特徴となるとともに、ほかのクロノグラフにも多大な影響をもたらした。

初代カレラ“Ref.2447”。文字盤の見切り部分に5分の1スケールが配置されており、1stモデルながらスタイリッシュで洗練された雰囲気を醸す
63〜70年にかけて製造された第1世代はメキシコの公道で開催された“カレラ・パンアメリカーナ”から着想を得たモデルで、ムーヴメントは手巻きのバルジューが多く用いられたが、なかにはランデロンを搭載したモデルもあり、2カウンターや3カウンター仕様なども含め、多彩なバリエーションが展開されている。
ちなみに、ロレックスのデイトナとはいずれも過酷なカーレースにインスパイアされたモデルとして同じ1963年に誕生。デザイン自体が酷似しているわけではないが、バルジュー社ムーヴメントを搭載していたことに加え、文字盤も同じシンガー社製であるなど共通点も多い。

初代カレラに搭載されたバルジューのCal.72。合理的な設計かつコンパクトなサイズ感で防水ケースなどにも納めやすく、ロレックスのデイトナが搭載していたことでも有名だ
カレラが誕生50周年を迎えた2013年以降にタグ・ホイヤーがヘリテージ戦略を進めたことで、愛好家の間で注目度が上昇。フィリップスが17年に開催したホイヤー限定のテーマ・オークションで初代Ref.2447やRef.1158(金無垢)が記録的な高額で落札されたことから資産価値が国際的に公認され、いまでは投資の対象として認識されるようになった。
第1世代は市場に流通することはほぼないが、Ref.2447で400万円台後半〜500万円台。Ref.3647は200万台〜300万円台が相場。Cal.11を搭載した第2世代の自動巻きモデルは100万円台。第3世代は最も手頃で、90万円前後で狙える。ただしクロノマチック搭載機は修理が難しいため注意が必要だ。
著者profile◎市村 信太郎
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