【第13回】ポストヴィンテージ時代の腕時計|ロレックスの魅力を残す回転ベゼルを装備したチューダー 2選

 1970〜90年代の時計にスポットライトを当てた当連載。13回目の今回は90年代チューダー(チュードル)として非常に人気が高い回転ベゼルを備えた二つのモデルについて取り上げたいと思う。

 チューダーは、もともとロレックスのディフュージョンブランド(価格を抑えた普及モデル)という位置付けだった。そのためラインナップもロレックスに準じたものだったことは有名な話だ。

(右)サブマリーナー。Ref.79090。SS(39mm径)。200m防水(当時)。自動巻き(Cal.ETA2824-2)(左)クロノタイム。Ref.79170。SS(40mm径)。50m防水(当時)。自動巻き(Cal.バルジュー7750)

 1980年代のカタログを例にとると、クロノグラフはデイトナに当たるクロノタイム、ダイバーズウオッチはそのまま同じ名前を冠したサブマリーナー、そしてエクスプローラーに当たるレンジャーが展開されていた。しかもデザインもさることながら一部のパーツはロレックスと共有していたこともあって、根強いファンはいまだに多い。

 今回は、そんな80年代のラインナップのなかでも回転ベゼルを備えたサブマリーナーと同じく回転ベゼルを持つクロノタイムを取り上げる。

サブマリーナーのRef.79090はプラ風防の最終形であり、トリチウム夜光であることも人気となっている

 まずダイバーズウオッチのサブマリーナーだが、チューダー人気を牽引したモデルであることは言うまでもない。ご覧のとおり本家と同じなのは名前だけではなくデザインもそっくりなのである。ここに取り上げたのはサブマリーナー名を冠した最終形であるRef.79190のひとつ前のRef.79090。1989年から94年まで生産されたレファレンスだ。

 実はこのモデルがプラ風防最後のレファレンスということからも人気が高い。現在の実勢価格は60万〜70万円台といったところだろう。ちなみに95年に登場したサブマリーナー最終形のRef.79190はサファイアクリスタル風防に逆回転防止ベゼルが装備された。

クロノタイム、Ref.79170。本家ロレックスの80年代のデイトナを思わせるリューズガード

 一方のクロノタイムだが、当連載の第8回で取り上げているため詳しくは割愛するが、チューダー初の自動巻きクロノグラフとして1976年に登場したコレクションである。

 そして、そのバリエーションのひとつに双方向に回転するベゼルを装備した異色モデル、Ref.9430/0が展開された。その後継機として1989年に登場したのが、ここに取り上げたRef.79170である。デザインや風防などの仕様は前作から継続されつつブラッシュアップ、ケースとリューズにもロレックスのロゴが採用されている。しかしブレスレットのクラスプだけはチューダーのロゴが施されるようになった。気になる現在の実勢価格は80万〜90万円台が中心だ。

 両者とも以前に比べたら現在の相場はかなり高騰したため残念ながらおいそれと手の出せる状況にはないが、現行にはない味わいと魅力には、引きつけられるものがあることも確かである。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。