芸能人の愛用時計

笑福亭 笑瓶 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.50)

現在愛用中のジャガー・ルクルトのマスター・コンプレッサー エクストリーム・ワールド・クロノグラフ。大好きなクロノグラフの時計は、落語の稽古で時間を計るのにも重宝している

 

40歳を超えるまで腕時計なんていらないと思っていました。アクセサリー類はもともと苦手だし、時間を知るには携帯で十分やがな、と。ましてウン百万の時計と聞けば『車買えるやん』と思ってしまう。大阪あきんど的発想というんですかね」

そんな笑瓶さんが時計を意識し始めたのは、行きつけの飲み屋で店の女性が「ロレックスの方」「オメガの方」と時計で客を呼び分けているのを知ったとき。「下世話な話ですが、そうか、そういうところを見られているのかと自分も持つ気になった(笑)」とは、いかにも気取らない笑瓶さんらしい。

最初の1本はヴァシュロン・コンスタンタン。純粋に見た目の格好よさにひかれたが、初心者とはいえそれだけでは買わないのが「大阪あきんど」たる所以。まずは時計選びの基準を知人に尋ね、どんなブランドなのか情報収集を重ねた。しかしそうして歴史や技術を知るうちに、最初は「どえらい値段」と感じた時計に相応の価値を感じ、魅了されていく。「高級スーツも指輪も身に着けず、いつもスポーツジャージ姿の自分も、身に着ければ格が上がる気もする。エエ年にもなってきたしバチは当たらんやろ、と、一大決心をして買いました」。さらにブランドの魅力を痛感したのは、使っていた時計が故障したときのこと。「軽い気持ちで修理店に持ち込んだら、『私たちの技術ではとても扱えないので本国に送ります』と言われた。そんな厄介な! エライものを手にしてしまった……と思う一方で、日本の職人が『ハハーッ』とばかりに畏まって扱う様子に、ブランドの凄みを感じたんです」。そんな高級時計を持つ気分は、中学生になったときの誇らしさに似ていると言う。「ランドセルが手提げに代わり、安物だけど万年筆と腕時計を買ってもらったときの、『お兄ちゃんになったんや』という喜びを思い出すんですよ」

ところで、その後飲み屋の女性の反応はどうだったのだろうか? 「それがね、どのブランドかを気にせず選ぶからメジャーな時計を持ったことがない。ヴァシュロン・コンスタンタンの次はジラール・ペルゴを買ったけど、自分でもブランド名を忘れ、刻印の文字も小さくて読めず、しまいに『何て書いてある?』と人に見せて尋ねる始末(笑)。当然、女性にも気付いてもらえんのですわ」

インスピレーションから入り、価値に納得して選んだら、あとは気負わずさらりと着ける。そんな時計との付き合い方はどこか笑瓶さんの芸風にも通じる。「毎年、今年の目標を聞かれますが、例年どおり、いつもどおり。テレビでも高座でも、自分のしたことで笑ってもらえればそれでいいんです」

 

杉 良太郎タレント
SHOHEI SHOFUKUTEI 1980年大阪芸大を卒業後、笑福亭鶴瓶に師事。付人として修行中、MBS『突然ガバチョ!』『ヤングタウン土曜日』のレギュラー出演を機に関西での人気を確立する。1987年、東京に拠点を移し、NTV『鶴ちゃんのぷっつん5』、CX『ものまね王座決定戦』等のものまね芸で一躍人気者に。現在はTBS『噂の!東京マガジン』、YTV『大阪ほんわかテレビ』にレギュラー出演。NHK-FM『気ままにクラシック』でのパーソナリティ経験を生かした楽しい解説トーク付きCD『ちまたで話題のクラシック』(DENON)も好評発売中。

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