GMTマスター II のシンボル。2色ベゼルタイプはなぜ8年も発売が遅れたのか!?|【ロレックス】通信 No.102

 今回は視点を変えてGMTマスター II の象徴である2色に色分けされた、俗にいう “ツートンベゼル”について着目してみたい。

 ほとんどの方はおわかりだと思うが、まずはこのツートンベゼルがなぜGMTマスターに採用されたのかについて簡単に触れておく。

パン・アメリカン航空にも制式に採用されたGMTマスターの初代モデル、Ref.6542。だいぶ変色しているが昼に当たる6〜18までが「赤」で、夜を表す18〜6までが「青」と2色に色分けされている

 このGMTマスターだが当時のパン・アメリカン航空からの要請で開発された。最初に発表された1955年といえば国際線の航路も広がり、大型ジェット旅客機時代を迎えようとしていたころだ。当然、時差のある国と国の間を往き来することが増えることから、パイロットはその二つの国の時刻を同時に把握する必要が出てくる。そこで時分針とは別にもうひとつの時刻を指し示すための副時針(GMT針)を設けて開発された。

 この副時針は24時間で1周し、ベゼル上に設けられた数字を指し示して時刻を知らせる。つまり、その時刻が昼なのか夜なのかを感覚的に判断できるようにと、ベゼルの色を夜の時間帯を「青」、昼の時間帯を「赤」に色分けされたというわけだ。

2007年にスチールモデルが登場する。ただこのときは写真左の黒の単色ベゼルタイプ(Ref.116710LN)のみだった。右は2013年に登場した最初のツートンベゼル、Ref.116710BLNR

 さて、GMTマスターがフルモデルチェンジを実施し、ベゼルのインサート(目盛りがある部分)の素材が、それまでのアルミニウムからセラミックに変更されたのが2005年(ゴールドモデル)のこと。スチールモデルはその2年後にリリースされた。ただ当初は黒の単色ベゼルのみで、ツートンベゼルは存在しなかったのである。

 そして、ツートンベゼルの黒青タイプが初めて登場したのはフルモデルチェンジから8年後の2013年だった。ではなぜ8年も後になったのだろうか。

おそらくは8年以上なのではないか。研究と開発に多くの時間を費やして、見事にモノブロックのセラミックインサートを多色成形することに成功した

 公式に詳細は発表はされていなかったように思うが、当時言われていたことはロレックスはセラミック素材のモノブロックインサートを独自に開発し、それを多色成形で2色を再現することにこだわったことが背景にあったようだ。これは高度な技術をもつロレックスといえども技術的にかなり難しかったようで、この問題を克服するための研究と開発に多くの時間を要したということだった。素人目には、それぞれの色のインサートを別々に成形して合わせたほうが早いような気がするのだが…。

 しかも、モデルチェンジされた8年前に開発に着手したとは考えにくい。だとすれば実現するまでに要した時間はそれ以上なのではないか。ベゼルにこれだけの開発期間と恐らくは膨大な費用がかけられているのだろう。なんともすごい話である。

 実機を見るとわかるが、色の境目が近くで見ると綺麗に分かれているのに、遠目で見ると自然に変わるようにも見えるのは、まさにその賜物と言えるのかもしれない。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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