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【アンティーク時計の隠れた逸品教えます!】回転ベゼルを装備したスポーティなデイトジャスト“サンダーバード”

 ロレックスのドレス系ラインとして知られるデイトジャスト。創業者であるハンス・ウイルスドルフによって、同社が目指す実用時計の集大成として1945年に発表されたコレクションである。センターセコンドに3時位置に設けられた小窓形式のデイト表示というスタイルは、いまでこそ一般的だが、当時の自動巻き腕時計としては初の試みだった。このデイト表示の3時位置というポジションは、実は偶然生まれたものではない。Yシャツの袖口に時計のフェイスが隠れていても、ちょっと袖をまくれば日付けが確認できる。実はそんな気遣いから考えられたものだったらしい。つまり、日常の道具としてこれからの腕時計のありようを示したモデルとも言えるのだ。

 少々前置きが長くなったが、このサンダーバードは、そんなデイトジャストのシリーズに属したモデルなのである。しかしながら双方向に回転するベゼルをもつ。ドレス系のデイトジャストにあっては言わば亜種なのである。そのため若干好き嫌いは別れるかもしれないが、ほどよい個性がファッション的にも楽しめるうえに意外に飽きがこない。しかも、その生い立ちがまたいい。何かと語れるのである。  この回転ベゼル付きのデイトジャストは、一説によると、ロレックスのニューヨーク支店が55年に現地法人に格上げされたことを機に、同社からの提案でアメリカ市場向けモデルとして56年にリリース(54年説もあり)されたものだといわれる。そのため、このサンダーバードという名前は、アメリカ国内でのみ使われていた愛称だ。ではなぜそう呼ばれるようになったのか。そこには商魂たくましいロレックスならではの巧みな販売戦略が垣間見られる。

■Ref.6609。K18YG(36㎜径)。自動巻き(Cal.1065)。1950年代製

 

 56年、アメリカ空軍所属のアクロバットチーム“サンダーバーズ”の隊長にして同空軍の英雄でもあったドン・フェリス大佐の引退に際して、その記念品に回転ベゼル付きデイトジャストのファーストレファレンスに当たるRef.6309をベースに特別発注された。これが大変好評を博し、サンダーバーズの隊員向けにも少量作られた時期があったのだ。
 そしてロレックスは“サンダーバーズのために開発されたデイトジャスト”として、この名もない回転ベゼルをもつデイトジャストを、一般向けにも展開を図ったのである。つまりサンダーバードの愛称はここから付いたというのが通説になっている。現に、後にはヨーロッパや日本でも販売されるようになるが、昔の日本向けカタログにはターノグラフ(ターン・オ・グラフ)と表記(もちろん文字盤上にも記載はない)されており、アメリカだけの名称だったことがわかる。
 さて、サンダーバードのシンボルでもある回転ベゼルは、サブマリーナーなどのダイバーズウオッチと違い双方向に回転する。あくまで経過時間を知るためのもので時間が制約されているときなどに役立つ。その素材はゴールド製というのが鉄則。しかもそのベゼルには俗に“エンジン・ターンド”と呼ばれる装飾が施されている。これが全体の雰囲気に古典的な味わいをもたらし、いまなお愛好家に支持される大きな要素となっているのだ。

■Ref.1625。YG×SS(36㎜径)。自動巻き(Cal.1565)。1960年代製

 なお、サンダーバードは2013年まで6世代にわたって受け継がれてきた。そのうち一般的にアンティークに分類されるのは第3世代のRef.1625まで。相場は、デイトジャストより上、スポーツロレックスよりは下である。アンティークでは第3世代が最も流通が多く、実用性も高いためおすすめだ。18金モデルはかなり高価だが、スチールとのコンビモデルであれば、60万円前後から狙うことができる。

 

 

文◎編集部/写真◎笠井 修

 

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