半年前くらいに購入したというアップルウォッチ。ただし機能的にはほとんど使いこなしておらず、ほぼ時刻を見るためだけに使っているという
いまはアップルウォッチを愛用しているモーリーさんだが、特に時計に思い入れはないという。
「中学生になったときに、親に初めての時計を買ってもらいましたね。ガラスがカットされているきれいな時計で、いまもすごく印象に残ってる。中2のときにはデジタル時計を買ってもらって、その時計も好きだったな。自分としては、時間の感覚って受験勉強で養われたと思ってる。当時は模擬試験をよく受けていたけど、残りの問題がこれだけあるから、この問題は何分で解かなきゃ間に合わないってよく意識してましたよ。いまはテレビ番組に出演するときにスーツを着る機会が多いから、1本くらいちゃんとした時計を持っていてもいいとは思うけど、買うならばシンプルなものよりムーンフェイズとかちょっとユニークなデザインの時計がいいですね」
ふだんの生活で意識する時間は、作品制作に関わるほんの一瞬のタイミングだ。
「90年代に音楽をやっていたころは、電子楽器とテープレコーダーをどうやってシンクロさせるかっていうのが問題で、当時はSMPTEという1/30秒単位の同期信号を使っていました。いまは映像やメタバースの作品を作っているから、映像のフレーム単位が自分の時間感覚の基本になっている。作品を作っているときは、50msec(1000分の50秒)とか微妙なズレに対してすごく敏感になるんですよ。そういう時間感覚は、やればやるほど研ぎ澄まされていきますね」
テレビ番組のコメンテーターとしても活躍するモーリーさんだが、連日の生放送出演に臨機応変に対応するテクニックはどうやって身に付いたのだろうか?
「ラジオDJをやっているころに鍛えられましたよね。ラジオのスタジオには、CMまでの残り時間をドットで表示する大きな時計があるんですよ。あれが残り時間を考えながら喋る訓練になった。いまも自分としては気負わずやれてますよ。昔は自分の主張がいっぱいあって、放送が押しても言いたいこと言うんだって意気込んでいたけど、結局はテレビってエンターテインメントでしかないから、そこで無理に頑張ったって仕方ないってことに気づいたんです(笑)。だからいまは要点だけ、時間内にきちんと収めて喋ります。それにいまは一般人の方がテレビっぽいっていうか、業界っぽい感じがあるでしょ。特にSNS以降は“いいね”の数にしろすべてが数値化されているから、みんなそれを意識して動いてるように見える。たまに音楽でフェスに出演したりもするけど、いまは小さなフェスでもタイムテーブル通りに進行して時間が押したりしないし、アングラな文化なはずなのに、そういうところでもなんだか変に余裕がない。みんなもっとラフでいいんじゃないって思うよ」
MORLEY ROBERTSON 1963年1月12日、ニューヨーク生まれ。米国人医師の父と日本人記者の母との間に誕生し、5歳から広島に移住。東大に入学するもプロミュージシャンを志して中退し、ハーバード大学に入学して現代音楽や電子楽器、映像制作を研究。その後はミュージシャンやラジオDJとしてボーダーレスに活動する。近年は『スッキリ』(日本テレビ系)のコメンテーターなど、タレントやジャーナリストとしてのメディア出演活動も目立っている。