●メーカー側の利益はゼロ!?衝撃コラボの真の狙いとは
今回のコラボにおいて、オーデマ ピゲ側は利益の100%を伝統技術の継承に寄付すると明言している。つまり、メーカー側はビジネスとしての直接的な儲けを放棄しているのだ。目先の利益ではなく、中長期的なブランド戦略の一環としての施策なわけだが、そのなかでもやはり大きな狙いは若年層を中心とした新たなファン層の獲得だろう。
スウォッチグループの2025年の推定売上高は前年比5.9%減の62億8000万スイスフラン(約1256億円)と報じられており、営業利益はそれ以上に激減しているとの情報も聞かれる。主に中国市場の需要低下により高級時計市場が苦境に立たされるなか、低価格なカジュアルウオッチという分野で起爆剤を作りたいのだろう。
Z世代を中心とした若い世代の間でファッションアイテムとして地位を確立すれば、認知度の拡大はもちろん、かつてのスウォッチブームのような盛り上がりが再燃するかもしれない。
オーデマ ピゲ側も高額化路線とは一線を画す新たな戦略の実験として、非常に有意義な試みであることに間違いない。このコラボが奏功すれば、ほかの多くの高級時計ブランドが追随する可能性もあるだろう。

Royal Popは、時計ユーザーの垣根を超えファッションアイテムとしてブームを生み出す可能性も
一方で無視できないのが、いわゆる転売問題だ。通常、限定品の転売はメーカーの利益を横取りする行為として嫌悪されるが、今回はメーカー側が最初から利益ゼロを公言しているため、転売市場価格の高騰に対してメーカー側がコントロールする動機が薄い。結果として、買い占めに走る転売ヤーにとっては純粋な需給バランスだけで価格を吊り上げられる格好の標的となってしまう。
メーカーが儲けゼロで作ったアートピースが、市場でマネーゲームの道具にされる。こんな皮肉な構図にさせないためにも、購入者にはある種のリテラシーを求めたいところだ。もしこの記事を読んでいるあなたが幸運にもこの話題作を手に入れられたのなら、目先の数万円を得るよりも時計史に刻まれるであろう一作を愛用し、手元に残しておくことこそが最も価値のある選択であるはずだ。
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