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デッドストックの手巻きムーヴで実現した36mm径の小振りサイズ“ムーンフェイズクロノ”|OUTLINEニュース no.44

2021年は9月21日だったが、今年の中秋の名月は今日(9月10日)だそうだ。みなさん知っていましたか? ということで十五夜のためちょうど満月。予報では東京はバッチリ観られるようだ。

さて、月といえばやっぱり思い浮かぶのは“ムーンフェイズ”ですよね。ということで、ちょうど昨年の中秋の名月にちなんで書いたアウトラインのムーンフェイズクロノグラフ7768について、その時の記事をベースに少し加筆したものを以下に再転載で紹介させていただく。

アウトライン・ムーンフェイズクロノグラフ7768は、ストップウオッチの機能であるクロノグラフに月の満ち欠けを表す月齢表示としてムーンフェイズが付いた高機能手巻きモデルである。最大のポイントは大きく二つある。ひとつはデッドストックとして偶然に発見されたバルジュー社の手巻きクロノグラフムーヴメント、Cal.7768を搭載している点。

もうひとつは、クロノグラフながらケースが36mm径と小振りなサイズだという点である。現代の時計では、20万円台という価格設定で製品化するのはまず無理かもしれない。その意味でも希少と言えるだろう。

真鍮ケース(裏ブタはステンレススチール)。ケース径36mm。非防水。手巻き(Cal.Valjux7768)。革ベルトはアリゲーター(トカゲ革)。17本限定(裏ブタに製造番号刻印)。定価24万2000円

 実は発見されたのはムーヴメントだけでなく、それを搭載した腕時計ごと見つかっており、80年代に日本で実際に販売されていたものだったのだ。しかもその本数たるや20本ちょっととごくわずかだったため、ケースを作り直すとなると1本あたりのコストが跳ね上がってしまい20万円どころの話ではなくなってしまう。そのためムーヴメントとケースは当時のものを再利用して、インデックスと針類を含めて文字盤全体を筆者がリデザイン。ゴールドのアルファ針にアプライド仕様のローマンインデックスを合わせて1950年代風のまったく新しいデザインで製品化したというわけだ。

ムーヴメントはもちろんだがケースも綺麗なものだけを厳選して採用している。そのため製品化できたのはわずか17本だけだった。

搭載されている手巻きクロノグラフムーヴメント、バルジュー7768。毎時2万8800振動。42時間パワーリザーブ。手でゼンマイを巻くときの「カリカリ」音がなんとも心地いい

 ちなみにこのムーヴメントの製造メーカーであるバルジュー社とは、1901年創業のクロノグラフムーヴメントの名門で時計好きなら知らない人はいないほどだ。このCal.7768も90年代で生産を終了している。それがまったくの未使用でしかも日本で見つかるというのはかなり珍しい。

また、ムーンフェイズクロノグラフ7768には80年代のオールドムーヴメントだからこその味わい深い特徴がもうひとつある。それは6時位置にあるムーンフェイズの小窓からのぞく月だ。よく見ると顔が描かれているのがわかるだろうか。かつては顔があるのが一般的だったのだが、20年ぐらい前から徐々に姿を消し、いまではほとんど描かれなくなってしまった。そのため現行品で目にすることはかなり少ない。この点も大きな魅力と言えるだろう。

扇状の小窓で月の満ち欠けを表すムーンフェイズ。現在はほとんど描かれなくなった顔が、オールドムーヴメントならではの古典的な味わいを醸す

 なお、ムーヴメントはそのまま使うのではなくすべてオーバーホールを実施し、調整を行なったうえで組み上げられている。そのため30年以上経ってはいるものの、ムーヴメントについては1年保証が付いているためご安心を。現在、残り数本だが当ウオッチライフニュースのオンラインSHOPと以下の2店舗でも販売している。実機が見たいという人はぜひ行って実機を見てほしい。

オンタイム銀座ロフト店 TEL.03-3561-0723
オンタイム渋谷ロフト店 TEL.03-5458-3076

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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