●代名詞の複雑機構モデルにも宿る“アンティークへの敬意”
フランク ミュラーの評価は、グラマラスなトノーケースだけに留まらない。ブランド黎明期には、重厚なラウンドケースのコンプリケーションモデルも数多く発表された。

星形インデックスは立体的に成形され、文字盤に手作業で植字。リーフハンドも平板ではなく中央がわずかに膨らんだ立体的な造形を備え、先端に向けてシェープされたフォルムなどに、初期フランクらしい丁寧な作り込みが見て取れる
そのひとつが、96年の“エンデュランスGT”だ。ル・マン24時間耐久レースを記念して製作された本作には、時計学校卒業後にオークションハウスのアンティコルムでアンティーク時計の修復に携わっていた時計師フランク・ミュラーのバックボーンが色濃く反映されている。
文字盤に踊る星形インデックスや、風防から裏ブタまでが連動して曲線を描く優美なフォルム。それらは1950年代の名品や古典的な懐中時計から得たアイデアを、彼独自の感性で昇華させたものだ。大振りなラグや重厚な飾りネジなどの細部の意匠も、現在のモデルとは異なる雰囲気を醸している。
【写真】懐中時計のエッセンスが光る!ラウンドケースを側面から見る
以降もアール・デコ調デザインの“ロングアイランド”やレディースラインとして人気の“ハート トゥ ハート”など、その後も数々のアイコンを生み出し続けてきたフランク ミュラー。来たる2027年には、創立35周年のアニバーサリーイヤーを迎える。
最新作に注目が集まるいまだからこそ、ブランドの魂が最も純粋に投影された初期モデルの魅力を、改めて腕元で感じてみるのも一興ではないだろうか。
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文◎市村 信太郎
