“エイジレス(年齢不問)”や“ジェンダーレス(性別不問)”という言葉を様々な場面でよく目や耳にするようになって久しい現代社会。世代や性別に限定されない暮らしや生活、商品やグッズなどに象徴されるこの概念は、各業界の垣根を超えていまの潮流を表すキーワードになったといっても過言ではないだろう。
ファッションにおいてはそれらに加え“シーズンレス”や“エフォートレス”といった言葉に代表される、季節を問わずに着られる肩肘張らない服装が若い世代を中心に広がっている。誰もが固定観念から解放され、好きなものを自由に選んで楽しめる時代になりつつある。そんな“レス社会”の現代においてファッション業界のほか、時計業界にも共通するキーワードが“トレンドレス”だ。
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普遍的なデザインの服や時計を男女で揃えて着用するのも、ジェンダーレス・トレンドレスの在り方のひとつだろう。
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●時代を超越する“完成された意匠”
主にSNSの発達より、これまで広く知られなかった情報がすぐに拡散され、流行のサイクルが数年単位から数週間単位へと高速化(直近では生成AI技術も飛躍的に向上し、情報の取捨選択や事実の精査もますます難しくなっている)。
そんな現代社会において、人々はトレンドを消費し、消費されることに明確な疲弊を感じ始めている。そんな時代の私たちが熱い視線を注ぐのは、流行の最先端ではなく“時代から完全に切り離された、変わらない価値”なのかもしれない。
それを象徴する存在こそ、アナログ腕時計ではないだろうか。電気自動車やPC、スマートフォンなど、大小問わず現代に必要不可欠な電化製品はどれも便利で合理的だが、数年経てば型落ちとなり、システムアップデートの対象外となってしまう。価値の大部分が機能性であるプロダクトは、常に最新のトレンドに追い抜かれる運命におかれている。
それに対し、腕時計は数年おきにモデルチェンジを繰り返してはいるものの、基本となる構造やデザインコードは100年前からほとんど変わっていない。

不滅の定番機と呼ばれる腕時計は、半世紀以上前の誕生時からほとんどデザインが変わらない
たとえば1917年に誕生したカルティエの「タンク」、32年のパテック フィリップ「カラトラバ」、45年のロレックス「デイトジャスト」などの歴史的傑作は、いまなおほぼ当時の姿のままラインナップされており、当時の人々とまったく同じように現代人が着用し、その美しさに惚れ込んでいる。ここには“型落ち”という概念そのものが存在しない。
●古臭くならない普遍性“トレンドレス”の魅力
もちろん、これは高級時計に限った話ではない。半世紀以上基本シルエットを変えない車やバイク、何世代にもわたって修復しながら使い継がれるアンティーク家具、あるいは何百年も前に書かれた古典文学。これらは流行という概念の外側にいるため、10年後であっても、50年後であっても、決して古臭くならない普遍性を備えている。

アンティーク家具や本もまた、時計と同じように時代を超えた魅力を備えている(※画像は生成AIによるイメージ)
「いまこれが流行っているから」「来年値上がりしそうだから」という、実体のない市場のトレンドを追うのに疲れてしまった人には年齢や性別、そして時代すら軽やかに飛び越えていく“トレンドレス”な相棒をひとつ持つことをおすすめしたい。それこそが、ディスポーザブルで慌ただしい現代を優雅に生き抜くための知恵であり、究極の贅沢とも言えるだろう。
著者profile◎市村 信太郎
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